レジオネラ属菌の検出法には限界があるのが現実

常在菌のレジオネラ属菌は35℃～45℃で最も繁殖する

厚生労働省がまとめた公衆浴場の衛生など管理要領では、原水、原湯、上がり用水の水質基準や浴槽水の水質基準の中で、色度、濁度、水素イオン濃度、カマンガン酸カリウム消費量、大腸菌群は、原水（湯）と浴槽水で基準値が異なります。浴槽水のほうが基準は緩和されていると考えてよいでしょう。

しかし、レジオネラ属菌については、源泉と浴槽水で同じ値（検出されないこと、10CFU/100ｍｌ未満）となっています。温泉水を使った浴槽水では、常水の公衆浴場と比較して、入浴客の混雑度合いも著しく異なります。また、含有成分が変化に富んでいることもあって、塩素などの処理が必ずしも適しているとは限りません。また、塩素を添加しても浴槽水の残留塩素が基準値を満たしているとは限りません。

そして、これまでの浴槽水の検査結果から、レジオネラ属菌が不検出であっても、その状態が浴槽の中で続くともいいきれません。さらに、100ＣＦＵ/100ｍｌといった検出結果が得られても、採水場所、時間、日時、混雑具合などによって、この値は20であったり500、ときには数千に達することもあります。

つまり、1年間にレジオネラ検査を数回程度行っても、その値はある範囲を示しているだけであって、温泉水中の主成分であるCl−、SO₄²-、HCO₃–の含量値ほどの一定性はないと考えるのが妥当のようです。

また、温泉浴槽水のレジオネラ属菌のデータを検討すると、浴槽水では10ＣＦＵ/100ｍｌ以下が案外少なくて、10～1000ＣＦＵ/100ｍｌ、あるいはそれ以上であることも珍しくありません。だからといって、このように菌数が多い浴槽を利用しても、レジオネラ症を発する事例が思ったよりも少ないのも事実です。また、100ＣＦＵ/100ｍｌでも発症しないという保証もありません。つまり、10ＣＦＵ/100ｍｌ未満という基準値は、レジオネラ属菌の検出の限界であるとともに、それ以上では、菌数が増えるほど、危険性がある点に留意する必要があります。

一般的な意見としては、10ＣＦＵ/100ｍｌ未満は厳しすぎて現実的でないという意見が多くあります。しかし、この基準値そのものは妥当です。むしろ、菌数の値は浴槽水では、一定値が得られないこと、レジオネラ症は菌数が多くても必ずしも感染しないこと、レジオネラ属菌が常在菌で、特に35℃～45℃は増殖するのに適している温度である点が重要でしょう。さらにレジオネラ症は、浴槽が打たせ湯、泡風呂、ジャグジーなどのように、しぶきやミストを直接吸入しやすい形式の場合に感染しやすくなります。また、ミストの吸入か入浴では、菌数が100ＣＦＵ/100ｍｌ以下程度では安全と考えられます。つまり、本来ならば菌数の基準は浴槽の使用形態を考慮して決めるのが妥当なのです。しかし、これについてのデータは不足しており、安全であると確信がもてる現状ではないようです。

循環式の浴槽が避難を受けていますが、これは循環式浴槽を含む温泉の給湯システム全体の衛生管理に問題があります。つまり、温泉水は微生物やスライム、有機質などを含み、温泉沈殿物（湯垢）などを生成しやすい性質であり、さらには硫化水素、二酸化炭素、鉄などの成分を含んでいることが、河川水や地下水を原水として、さらに処理して造られる上水と著しく異なることです。

たとえば循環式浴槽では、ろ過器のろ材やヘアキャッチャー、パイプ、浴槽の内壁、タンクなどに温泉沈殿物、藻類、アメーバなどがレジオネラ属菌とともに付着しやすくなります。また、人の身体の垢などが栄養となって、同属菌かアメーバなどの付着物（ぬめり、バイオマット）の中で増殖します。つまり温泉水は、上水に比較すれば、菌が繁殖しやすい環境にあり、さらに浴槽水が42℃前後で、菌の繁殖に好ましい温度になります。

そこで上水を用いる浴槽よりも化学成分が微生物との関連を考えた衛生的な浴槽の管理が大切になります。これは、塩素などの殺菌処理を行うときに留意する必要があります。

施設管理を徹底しましょう！！

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